未知の乗り物を目指して競技会での力試し

JSETEC2009

JSETEC2010 総合優勝

日本でのスタート

2009年、日本で宇宙エレベーター実現を目指す民間団体、一般社団法人宇宙エレベーター協会(JSEA)の主催で、クライマーの昇降実験を行う競技会(Japan Space Elevator Technical & Engineering Competition:JSETEC)がスタートしました。

千葉県船橋市で行われた競技会は、苦心を重ねたクライマーが実際に動作するのか、実地に検証してみるまたとない機会です。屋外で、ヘリウムガスを詰めたバルーンにテザーを吊り下げ、宇宙エレベーターの地上付近を模してつくられた競技会場は、実験室の中とはまったく違う過酷な環境であることがわかりました。ときには強い風がテザーを吹き流し、たるんだふにゃふにゃの状態から板のように堅く張った状態までテンションを変化させます。拭き流されたテザーは横方向にたるみ、宇宙エレベーターの構想から想定していた、垂直に立ち上がった走路とは全く異なるものでした。

競技会でのプレゼンテーション

JSETEC2011

健闘と成績

そんな中で、第1回宇宙エレベーター技術競技会 JSETEC2009には神奈川大学 工学部江上研究室宇宙エレベータープロジェクトから2チームが出場しました。機体シリーズ「KSC」を踏襲する「KSC-I」「KSC-II」が参加。150mの昇降を行い、「KSC-I」が総合第3位、「KSC-II」が「未来デザイン賞」を獲得しています。

翌年、2010年のJSETEC2010では「KSC-III」「KSC-V」が出場。「KSC-V」は300mのテザー昇降で2分36秒の記録を達成し、大学・社会人14チーム出場の競技会で総合優勝しました。

競技会場を静岡県富士宮市へ移し、高度600mという高いハードルを課された2011年の競技会。「KSC-III改」「KSC-V改」「KSC-VI」および初のロープ型クライマー「KSC-rI」の4チームが出場した神奈川大学 工学部江上研究室宇宙エレベータープロジェクト。「KSC-III改」が「耐環境賞」「信頼・安全賞」を獲得する成績となりました。テザーの仕様が変更となり、薄くよじれやすく、クライマー設計に課題を強いた競技条件を克服し、高度約300mまでの上昇を行い健闘した結果です。