宇宙エレベーターとは機械工学の課題としてのクライマー

NASA Science Newsより

宇宙エレベーター協会「宇宙エレベーターとは」より

宇宙エレベーターの具体案

新素材カーボンナノチューブの発見によって、実現度がにわかに高くなった宇宙エレベーター。しかし、実際に宇宙エレベーターを建造するとなれば、一体どのような構造、設計になるのか? どこに建造され、どの程度の速度で、どのくらいの貨物を輸送することができるのか。ロケットよりもそのメリットは十分に大きいのか、費用はどの程度かかるのか……実現性検討(フィージビリティ スタディ)と呼ばれる研究が2000年代初頭に行われました。検討を行ったのは、米国ロス・アラモス研究所の研究者ブラッドリー・C・エドワーズ博士。カーボンナノチューブをケーブルとして採用する案を中心に、建造可能な場所やケーブルの実際の長さ、宇宙エレベーターを昇降する機械のあり得る姿を具体的に記述したそのプランは、書籍「宇宙旅行はエレベーターで」で知ることができます。

エドワーズ博士が構想した宇宙エレベーターでは、ケーブル長を10万kmとしています。静止軌道の高度約36000kmを大幅に超えますが、これはケーブルにかかる遠心力と引力の釣り合いをとり、ケーブルが安定して地上から垂直に留まっていられるようにするためです。また36000kmより外側は衛星や宇宙船のカタパルトにもなります。カーボンナノチューブのケーブルは、 非常に薄く、まるでひらひらしたリボンのようになることが想定され、「テザー(ひも)」と呼ばれています。

地上のエレベーターとの違い

一見頼りない、しかし実際は鋼鉄よりもはるかに強度の高いテザーを昇り降りする機械は、「クライマー」と呼ばれます。しかしこのクライマーを実際に機械として実現するには、全く新しい発想が必要でした。宇宙”エレベーター”とはいうものの、ループ状のケーブルを巻きとることで乗り物(ケージ、ゴンドラ)を移動させる、現在の建築物のエレベーターと宇宙エレベーターはは全く違う構造だからです。

地上から垂直に伸びる「ひも」を伝って天へ向かう、そんな機械も乗り物も存在しません。一体どのようにテザーを”掴め”ばよいのか? それをどう制御するのか? 速度の目標は? 熱や振動への対策は?

まったく新しい課題として、クライマーとはどうあるべきか、それに取り組んでいるのが神奈川大学工学部 宇宙エレベータープロジェクトなのです。