2019年度神奈川大学図書館へ出展しました




    目次
  1. 企画設営
  2. 展示の様子
  3. 《展示抜粋1》宇宙と古代人 ~暦に見る宇宙の観察
  4. 《展示抜粋2》宇宙と古文 ~空を見上げる日本人
  5. 《展示抜粋3》夜明けの国産宇宙開発 ~始まりは僅か23cmのペンシルロケット~
  6. 《展示抜粋4》国産民間宇宙開発の現在 ~インターステラテクノロジズ社の創意工夫~
  7. 《展示抜粋5》宇宙エレベーターの始まりと現在
  8. 《展示抜粋6》宇宙エレベーターの未来
  9. 《展示抜粋7》未来の宇宙食 ~3Dプリンターで作る宇宙食~
  10. 展示協力
  11. 参照

例年宇宙エレベータープロジェクトが企画協力している神奈川大学図書館への展示企画が今年も無事終了致しました。今年は7月13日~9月18日までの期間で、テーマは「宇宙の歴史 ~夢と挑戦の物語~」という形で企画させていただきました。

人類の宇宙との関わりは遥か昔まで遡ることが出来ます。今でこそ人類は月面へ行き、宇宙空間に滞在し、軌道上には数えきれない人工衛星を浮かべ、数多の探査機を太陽系中に送り込むなど積極的に宇宙を探査し、さらに我々の生活には無くてはならない水準まで産業化を実施しました。

近年では今まで国家主導であった宇宙開発が徐々に民間主導の産業へと移行し、発展の度合いは次の段階へと移ろうとしています。

しかし宇宙へ行かずとも人類はその黎明期より宇宙との関わりを重要視し、日々の生活の中に取り入れて来ました。ある時は一年における'今'がいつであるかを知り生活の指標とする、ある時は航海や地図作りの際に方位を知り自らの位置を判断する、ある時は国家運営の判断基準とする、またある時は占星に用いるなどです。それらは生活の実利的な部分のみに留まらず神話や物語、文学などの文化的な活動にまで多大な影響を与え続けています。


ここでは展示企画の様子の報告と展示内容に関して簡単に抜粋したものを紹介させていただきます。

企画設営と展示の様子

企画設営

展示用の各国の宇宙食が搬入されます

宇宙食展示の調整をする部員

展示パネルの搬入

展示パネルの壁面設営

展示に関する話し合いをする部員と顧問

展示の様子

国立天文台様よりお借りしたアルマ望遠鏡の模型

3Dプリンターで出力した実寸大のペンシルロケットの展示

展示内容の抜粋

宇宙と古代人 ~暦に見る宇宙の観察

 人類はいつから空を観察していたのだろうか。古代の宇宙観には、哲学や思想から考えられた地動説と観察などを根拠に物理現象と捉えた天動説があり、天動説ではプトレマイオスは周転円がよく知られている。 エジプトでは、約4000年前から太陽や星、その位置関係を観察していたという記録が残っている。  まだ、精密な望遠鏡がない時代に、肉眼の観察のみで、エジプト暦(現在使われている太陽暦の基)を作り、祭日や農業の指標にしていた。  その後、月を無視する「太陽暦」と月の満ち欠けしか考慮しない「太陰暦」(主にイスラム教)に大きく分けられ、神話や宗教、政治にも関わってくるような大きな議論となった。今でもそれらの暦の影響がイスラム国の国旗に残されている このように、人々の宇宙の観察は昔からされており、世界的に影響を及ぼしてきた。 技術が発達した今、より大きな影響が出る発見がでてくるかもしれない。(参照1)
ピラミッドからの天体の観測 Credit: 外務省

宇宙と古文 ~空を見上げる日本人

 万葉集を知っているだろうか。 「令和」という年号を選定した和歌として一躍有名になった和集である。 今もなお、当時の生活や時代の流れを知ろうとたくさんの国文学者達が研究を続けている。 万葉集に限らず、和歌は恋を詠うことが多い。 その心を天候、特に太陽や月と結びつけることが昔から多かった。何かに結びつけるという意味では、現在もある「季語」というものはそれに近い。 一つ万葉集から抜粋してみたいと思う。 また、万葉集が7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂されたのと同時期に、奈良県明日香村の「キトラ古墳」が造られたと考えられている。 キトラ古墳は壁画古墳であり、その壁面には天体観測をしていると考えられるような壁画がある。(参照2) 肉眼で見るのには限度があるが、万葉時代の人々が見る宇宙が今よりも綺麗だったならば、私も一度見てみたい。
キトラ古墳天文図 Credit: 文化庁

キトラ古墳天文図のトレース図 Credit: 文化庁

夜明けの国産宇宙開発 ~始まりは僅か23cmのペンシルロケット~

 日本の宇宙開発は戦後、本格的に始まる。技術や資金が非常に限られた当時、糸川英夫工学博士率いる東京大学生産技術研究所(以下、生産研)が開発したのが、僅か23cmのペンシルロケットである。ここでは当時の技術的制約の中でどのような工夫で研究が行われたのかを追う。   ロケットの開発において重要なことの一つは飛翔経路の観測だ。だが当時の日本には打ち上げたがったロケットの追跡・観測技術が無かった。そこで生産研は、ペンシルロケットが非常に小型であること利点として、水平に発射する方法を考案した。1m間隔で並べられた電気標的10枚を高速で貫通させるのである。この方法は標的を貫通した時刻を電気的に計測することで飛翔速度の精密な計測が出来る上、実験後の標的の穴の位置を調べれば飛翔経路まで3次元的に分かる非常に工夫された優れた実験方法であった。このような地道な工夫の積みI重ねの基に、現在の日本の高品質なロケット技術が成り立っているのである。(参照3)
ペンシルロケットを見つめる糸川博士 Credit: JAXA

水平発射用の実験設備の概略。貫通した標的の穴の位置で経路が分かる。 Credit: JAXA

国産民間宇宙開発の現在 ~インターステラテクノロジズ社の創意工夫~

 ここでは国産民間宇宙開発の最前線として今年5月に国産民間ロケットとして初めて宇宙に到達したMOMO3号機を打ち上げ、話題となったインターステラテクノロジズ社(以下、IST社)が、ロケット開発において限られたリソースでどのような工夫をしているのかを追う。  IST社ではロケットエンジンの設計に際して、通常は使用されないピントル・インジェクタと呼ばれる燃料噴射方式を採用した。ロケットエンジンは、まず燃焼室で酸化剤と燃料を混合した気体を作る必要がある。そこで燃料と酸化剤を噴射して混合する機構が必要になるが、その方式の一つであるピントル・インジェクタはNASAのアポロ計画に使われていた技術である。部品点数が少なく安価な反面、十分な性能を得にくい。そのため長年枯れた技術であったが、IST社は十分な燃焼実験の末、その方式でのエンジンで必要な性能を得ることに成功した。このような工夫をいくつも重ねて安価でも十分な性能のロケットを実現している。(参照4)
ピントル・インジェクタを採用したエンジンの模式図 Credit: インターステラテクノロジズ株式会社

宇宙エレベーターの始まりと現在

宇宙エレベーターは1885年にコンスタンチン・ツィオルコフスキーによって最初に提唱された。その構想は「天に届く塔と宇宙列車」というものだった。しかし、「自重で崩壊するので、素材的には建設不可能」とも書かれていた。 その後、1960年 旧ソ連のユーリ・アルツターノフが「天のケーブルカー」構想を発表。これは現在も研究されている宇宙エレベーターのモデルとほぼ同じものである。 だが、当時の技術力では到底実現などできない代物であったため、大々的に研究されることはなかった。 しかし、1991年にNECの飯島澄男博士が、カーボンナノチューブを発見。この素材によって宇宙エレベーターが実現できる可能性が飛躍的に高まった。 現在はケーブル素材開発や昇降機(クライマー)などを中心に研究が行われている。(参照5) 2009年にはクライマーの昇降実験を行う競技会も開催され、神奈川大学は総合3位。 2010年には同競技会で総合優勝。

宇宙エレベーターの未来

「宇宙エレベーターの始まりと現在」でも書かれているように、宇宙エレベーター実現にはカーボンナノチューブが必要不可欠である。これは鉄より硬く軽い、他にも様々な利点が存在するという素材である。しかし、現在はカーボンナノチューブを長く作ることは難しく、建築に使うことが出来ない。そのため、技術的に宇宙エレベーターが建設出来るようになるのは2050年ごろになると言われている。 現在宇宙に行く方法はロケットに乗る以外にない。しかも様々な準備が必要である。では、宇宙エレベーターが完成したとき世界はどうなっているか。ロケットは燃料が多く必要なため何回も打ち上げることが出来ない。しかし、宇宙エレベーターは昇るのに必要なエネルギーが少なく済むので何回も昇ることが出来る。更に宇宙エレベーターに乗るのには特別な訓練が必要ない、そのため誰でも宇宙に行くことのできる世界が待っている。(参照6)
宇宙エレベーターの完成予想図 Credit: NASA

未来の宇宙食 ~3Dプリンターで作る宇宙食~

現在は特殊な3Dプリンターでの宇宙食の開発も進んでいる。この3Dプリンターで食べ物が作れるようになれば、ボタン一つで必要な量だけ好きな食べ物が出せるようになる。既にピザが作れるものや、お菓子を作れる装置が開発されている。現在はお寿司をプリントする装置を開発中の企業などがある。お寿司をプリントするというと、ピザのプリントと変わらないように思うが、この寿司プリンターは職人が作った寿司の解析を行い、それをデータとして転送し、別の場所でも食べられるようにしているのが特徴である。つまり、いつでもそのプリンターさえあれば職人の味が味わえる。ただ、無重力でうまくプリント出来るのかはまだ分かっていない。また、同企業では人の体調解析をするものも開発されており、こちらも宇宙飛行士の体調管理の道具として、近い将来用いられるかもしれない。

展示協力

参照


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